牛飼いの先にあるもの

大晦日ですね。

こんばんは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。
今年も色々なことがありました。

命をつなぐ仕事

「牛は死ぬもんだ。」

ギクッとする言葉だけど、これ、牛飼いなら分かると思う。

屠畜をして肉になるという話ではなく、【命ある生き物だから何があるかわからない】っていうこと。

僕らは牛がいてこそ生活ができている。
それでも事故は起きてしまう。
どれだけ手を尽くしたと思っても、命に絶対なんてない。

先日こんなブログを書きました。
26℃と超低体温で死の直前。
一緒に4時間お風呂に入って復活した子牛の話です。
(画像をクリックすると記事に飛びます。)

あれから3週間。
この子は親の乳だけでは物足りなく、ミルクもガンガン飲むようになりました。

ミルクって咥えればゴクゴク飲めるものじゃない。
1回に数mlずつ吸っているんです。


3リットルのミルクを飲むのに400回以上も吸う子牛たち。
ダイソンよりも吸引力あるよね。
哺乳瓶が陰圧で凹むくらい。

まだまだちびっ子だけど、こんな姿を見ると嬉しくなります。
生きようとする意思を繋げた気がする。

このことをブログに書いてFacebookでシェアしたところ、北海道の酪農家さんからコメントをいただきました。

初めまして。私は、北海道で牛飼いをしています。嫁いだことで牛飼いをはじめて一年半。右も左もわからないままとにかく必死に牛と向き合う日々です。先日、田中さんが書かれていた低体温症の子牛のお風呂の記事拝見していたのですが、今朝、乾乳舎で瀕死の子牛と遭遇しました。予定よりも若干早い分娩で、親牛も舐めてやっておらず、発見した時には体毛が凍って目が白く濁りはじめていました。もうムリかも…と思ったのですが、田中さんの記事を思い出し、大きな一輪車にお湯をためて即席のお風呂を作り温めること2時間。無事に蘇生して、元気にミルクを飲んでくれました。もし田中さんの記事を拝見していなかったら、この子牛の命を繋ぎ止めることはできませんでした。本当にありがとうございます😊とにかくお礼をお伝えしたくて、突然で失礼と思いながら書き込ませて頂きました。

こういうのが本当に嬉しい。

牛が死ぬ。
牛を飼っていてこれほど虚しいことは無いから。

牛飼いは命をつなぐ仕事。

牛飼いの先にあるもの

2017年の大晦日も最後の最後まで気が抜けなかった。
朝牛舎に行くと産室の中で羊水がカピカピに乾いた子牛が座っていました。

「ああ、やっぱり親が舐めてない。。。」

初産の場合、子牛を上手に育てられないケースが多々あります。
顔を上げて一見元気そうな子牛でしたが、デジタル温度計で体温を測ると29.7℃。
平熱よりも10℃も低い。
即家に連れ帰り、お風呂です。

牛舎に戻して、親の乳飲むのを確認して、今スヤスヤと寝てる姿を見たところ。
ようやくホッとした。
調子がいいと油断した途端にこれだ。

今年はたくさんの出来事がありました。
その一つ一つが僕にとっては大切なものだけど、あえて1年を振り返るなら僕はこれをあげたい。
ずっと目標だった『1年を通しての子牛の死亡事故ゼロ。』

地味な目標かもしれない。
高値販売や規模拡大や賞を取ると言った人の目に触れる部分じゃないしね。
でも、僕はここに凄くこだわってきた。
生きていることは当たり前、だけど当たり前じゃ無い。
だから本当に嬉しい。

おかげさまで今は我が家はお肉を買ってくれる人がたくさんいる。
応援してくださるお客さんがいてくれることで、牛肉販売は10年も継続出来てる。
ここは僕にとって凄く大切な世界。

ただ、同じくらい、牛があっての牛肉っていう気持ちもある。
牛がなければ牛肉なんてない。
だからこそ牛飼いの先にあるお肉を届けたい。
そんな事を思う大晦日です。

来年も事故ゼロを目標に、大切なものを大切に進みたいな。

さあ、来年も主観たっぷりの牛の世界を発信していきますね(笑)
引き続き田中家まるごとよろしくお願いいたします。
皆さんも良いお年をお迎えくださいね〜!!


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。