子牛から学ぶ、牛の蹴りを最小限に防ぐ方法。

牛ってどんな動物に見えますか?

「目がかわいいですよね!!」「角が怖くて無理。」「近寄れないです。。。」「臭い。」「のんびりしてる。」「突進してきそう。」「臆病?」「力が強い。」

人によっていろんな見え方がある牛。
そのどれもが牛の持つ一面を正しく表しています。

でも、それは牛の全てじゃない。
人同士でも相手のことは分からないのに、ましてや牛です。
『牛ってよくわからない動物だよね。』
これが今、僕の中で一番しっくりくる言葉。

分からないからこそ気をつけよう

昨年末にこんなニュースを見ました。

北海道で牛による作業中に死亡事故が起きたというもの。
いたたまれない出来事ですが、牛に関わる事故というのは意外にも多い。

僕の大学の後輩も先日こんなツイートをしていました。

突かれる、ぶつかる、蹴られる、挟まれる、踏まれる、乗られる、噛まれる、叩かれる。。。

様々な牛による事故がある中で、圧倒的に多いのは蹴られるではないだろうか。

牛の蹴りから身を守るには

僕も数え切れないくらい牛には蹴られてきました。

鼻は折れて曲がっちゃったし、

膝の靭帯も2回切った。

全国の色々な牛の蹄を切っていると、本当に色々な牛と出会います。
気をつけていても防げないこともある。
牛はのんびりしているイメージがあるかもしれませんが、本気のキックは何が起きたのかわからないくらい早いのです。

ただ、同じ蹴られるにしても重症になるケースと軽症で済むケースがある。
その違いが、牛と人との間合いです。

危険ゾーンには入らない!!

牛の蹴りによる事故は99%が後肢。
前肢は構造上前後にしか出ませんが、後肢は横にも可動域があります。
そのため、牛のキックゾーンは意外に広範囲。

牛のキックゾーン

白く塗っているところが牛のキックゾーン。
牛は一度振りかぶるように肢を前に出し、斜め後ろに蹴り抜きます。
馬のように両足で真後ろにドーンではない。
例えれば日本刀を鞘から出して、剣で切るって感じです。
とにかく早い。
パパパパーン!!と連発で足が飛んでくることもある。

そしてこのキックゾーンの中でも、赤く塗っている場所が蹴りに最も力とスピードが乗る危険ゾーンです。
大怪我の大半がここで起きます。

牛に蹴られないためには①キックゾーンに入らないこと。
どうしても牛に触れなくてはいけない時は、②危険ゾーンに入らないことです。
これが一番重要。
中途半端に怖がっている人ほど危険ゾーンに立っていることが多い。

近づく時も横や後ろからではなく、斜め前から。
体をくっつけながら少しずつ後ろに向かって進みます。
そうすることでクリーンヒットを防ぐことができる。
もちろん何があるかわからないのが『牛』なんですけどね。

子牛が教えてくれたクリーンヒットを避けるポジション取り

僕が蹴られながら覚えてきたこと。
それと全く同じやり方を、実は子牛もやっていました。
蹴られながらもポジション取りを身につけていく子牛。。。

「そうだよな、やっぱそこだよな!!」
クリーンヒットを避けるポジションの取り方を、改めて子牛から教えてもらった。
(写真は同じ瞬間を角度を変えて撮ったものです。)

蹴られても蹴られても果敢に乳を飲めるのは、クリーンヒットが無いからです。
まともに当たると流石にヤバイ。
真上から見るとよくわかりますが、ぴったりと重なる事で親牛の蹴りの軌道から逃れている。
ボクシングでいうとこのクリンチかな。
中途半端な距離が一番危険。
牛の扱いも同じです。

動画で見るともっとよくわかるかな。
ぴったりとくっつくことで蹴られながらもクリーンヒットを避けています。

ちなみにこれを応用したものがこれ。
「真後ろ」も入り込めば意外に蹴りが当たらない。
入るまでが危険ですけどね。。。
上には上がいます。

牛も色々。
もちろん蹴らない牛もたくさんいる。
しかし、ふとしたはずみで驚いて足を上げてしまうこともある。
だからこそ「牛は蹴るもんだ。」そう思って接することが大切なのかなと思っています。

怪我して良いことなんて一つもないですからね。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。