畜産の新規就農を夢で終わらせないために。

ゼロから農業を始める。
そんな新規就農に憧れを抱く人も多いのではないだろうか。

農林水産省の統計によると、2018年度の新規就農者数は約60,000人。
そのうちゼロから畜産で起業する人は30人にも満たない。
その割合は0.05%。
畜産の新規参入は非常にハードルが高い。

その理由は初期投資額の高さだ。
比較的初期投資の少ない和牛繁殖農家であっても、専業で食べていくには3,000〜5,000万円の投資が必要。
そんな資金をキャッシュで持っている人は通常いない。
大学の新卒者が借りられる額でもない。

しかも資金があるから畜産業をスタートできるかといえばまた別の話なのだ。
たとえ土地を購入することができても、近隣住民の反対にあって牛舎を建てられないという話は非常によく聞く。

お金がないとできない。
でもお金だけでもできない。

畜産の新規就農を夢で終わらせないために

僕は2002年に畜産農家として新規参入した。
知り合いでも非農家から畜産業を始めた人は何人かいる。だから僕は決して「できない」とは言わない。

ただ、『こうやったらできるなんてキット』なんてものは知らない。
みんなそれぞれが自分の持っているものと状況の中で事業を起こす。人の数だけやり方がある。

ちなみに僕が起業できたのは縁と運に恵まれたから。たまたまです。自分一人の力ではとてもできなかった。
その上であえて言わせていただくならば、縁と運は待ってても絶対来ないということなんだ。

僕のところには牛飼いをしたいという子が全国からたくさん来る。
話を聞くとほぼ100%の人が現実を知らない。認識が甘い。
でもこれは経験していないから当たり前のこと。
僕だって未だ甘ちゃんだ。人のことを甘いなんて言える程大したことはしていない。

大切なのは認識の甘さじゃなく行動量です。
例えば僕のところに来る人の8割が質問をほとんどしない。
何かヒントがもらえると思っているのかもしれないが、課題が見えない中では僕も答えようがない。
行動しないと課題も見えない。

そう言うと「何を質問したらいいのかわからなくて。。。」という答えが返ってくる。
経験したことのない世界のことを一人悶々と考えていても妙案なんて浮かぶわけがない。
動いてこそ現実が見え、現実が見えるからこそ次の手を考えられるんです。

今日は加西市から楓ちゃんが来てくれた。
ずっとSNSで繋がっていて心安い子だけど、僕は「大丈夫だよ」とか言いません。
質問に答えるくらい。

偉そうに上から言いたいことも言いました。
でもこうやって来ることも一つの行動。
行動すると一人では見えなかった世界も見える。

別にね、起業することが偉いわけでもなんでもない。
畜産経営者よりよっぽど優秀な牧場従業員を何人も知っています。
言いたいことはどんなポジションにいようが、やりたいことがあるなら動くしかないだろってこと。
甘くても稚拙でもいい。むしろ稚拙なのは当たり前。
そして動かないと形にならないのも当たり前です。

縁も運は結果。毎日考えながら動くだけ。
それは牛飼いを始めてからもずっと同じことだから。

畜産の新規就農をしたいならとにかく動こう。
一人で畜産業は起業できない。
でも、一人でもやるという気持ちを持って動く。
動きながら思いを伝え続ける。

自分の事業なんだからね。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。