稲わらから牛を考える。

お米をとったあとの藁、イナワラ。

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牛にとって唯一無二の草である。

稲わらは栄養価や消化率が牧草の中でもとても低い。
しかし、稲わらというのは「牛の餌というのは栄養価や消化率だけではないぞ~!」ということを教えてくてる草なのだ。

牛はもともと栄養価の高いものをバクバク食べる動物ではない。
普通の動物が栄養にできない「草」を、自分の血肉に変えられるよう進化してきた動物なのです。

昨今飼育技術の進歩に伴って牛も改良され、牛乳をたくさん出す能力の牛が生み出されてきました。
こういった高泌乳牛は栄養価の高い餌を与え続けないと自分の体がもちません。

しかし牛の消化器官を見て考えてみると牛にとって必要なものは高カロリー・高タンパクな草ではなく、質素で粗剛性のある草だということがわかります。
消化しにくい繊維を分解し吸収するためにルーメンという大きな胃袋があり、それを生かした反芻という特有の行動が生み出されてきたのです。

たくさんの乳や肉を生産するという視点を一旦おいて、牛に負担のないメニューを考えた時に一番の指標となるのは糞の形状です。
高栄養のものを食べ続けると糞の形が常に緩くなります。
そういった牛は蹄も悪く、ルーメンアシドーシスなどの消化性の問題を抱えていることが糞や蹄から見てとれるのです。

僕は和牛繁殖農家です。
母牛を飼育し、その牛から生まれた子牛を育成し販売していますが、牛飼いをする中で稲わらの大切さを日々実感しています。
一見ロスの多いこの草は実は牛の体調を整えるのにとても効果的な草です。

稲刈りをしたあとの藁を見てみるとこんな形をしています。
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拡大してみると。。。
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ものすごい多重構造ですよね!
この構造が胃の中の水分を吸収し、草を分解する微生物のすみかにもなります。
また藁の軽さが胃の中の内容物を撹拌し結果的に消化率の良い給与体系を生み出します。

この稲わらに変わる草というのはなかなかありません。
おまけにワラには納豆菌も豊富で、牛の腸内環境を整えるのに優位に働いてくれます。
稲わらを与えることで体調が良くなる牛は多いのです。
この稲わらから「牛とはどんな動物なのか」を考えるととても面白い。

ただ、そうは言っても栄養価は低く消化性が悪いため子牛に多給すると下痢をすることもあります。
これは粗剛性がありすぎて胃壁を傷つけてしまうこと、消化スピードが遅く胃の中の緩衝材となるルーマンマットになるまでの時間差があること、他の草の摂取量も減るため粗飼料としての給与量が不足してしまうこと。などが主な原因。

それでも使い方さえ考えれば、とても魅力のある飼料だと思うのです。

この稲わら。
子牛はあまり食べません。
美味しくないんでしょうね。。。

僕も何度も食べてみましたが確かに味はイマイチです。
だけど、お米でも色々な品種があって味が違うのと同じくわらだって味が違うんです。

例えばコシヒカリのわらは美味しくない。
酒米やモチ米のワラはとてもよく食べる。
面白いでしょ~!

今はたくさんの方のご好意でなんとか藁の確保が出来ていますが、今後は厳しくなってくることは間違いありません。
少しでも国内でのワラの確保を増やし、「強い牛」を作っていけるよう勉強していこうと思っています。

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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。