畜産の新規参入は難しい。ってそれは所詮人の意見だから。

僕のところには牛飼いを目指す若い子がたくさん来る。

鹿児島から勉強に来たNさん

みんな僕のSNSやブログを読み込んで、時間とお金をかけてくる子たちばかりだ。

畜産の新規参入は難しい。

5000万円以上の初期投資と運転資金の確保、土地を利用するための地域との付き合い、どん底に落ちた時にも立ち上がれる精神力、お金を回す感覚、牛を見る目、、、、

こんなもの普通持ち合わせている学生なんていない。

でも、そんなこと言ってたら「出来ない」にしかならないんだよ。

この牛舎を間借りさせていただくところから、僕の牛飼いはスタートしました


僕が大学生の時だ。
畜産の新規参入をされた牧場に研修に入り、就農の話を聞かせてもらった。
若かりし頃に単身渡米し、馬に乗り牛を追うカウボーイのような事をしていたという親方の話を聞きながら、「時代が全然違う、参考にならないわ。。」と思ったんだよね。

そんな僕も今では逆の立場。
僕が始めた頃と今の子では時代が違いすぎる。僕の事例は誰にも当てはまらない。

以前こんなブログを書いた。
あなたの事例と私の事例は違う。新規就農に成功事例を求めないこと。

正解を僕に求めるのはお門違いだし、僕と同じようになりたい人がいたらマジで反対する。
ほぼ無一文で飛び込んで、人の縁で拾われて、運とタイミングでスタートしながらBSEで子牛価格は大暴落。
お金がない中で削蹄師として弟子入りし2束のわらじで進むものの鬱病で1年リタイア、大きな病気が牛舎にはいり年間販売頭数の1/3の子牛が3カ月で死んだ。
お肉販売を始めたら1頭を売り切るのに半年間もかかり、賞味期限きれのお肉を自分で食べる日々。真っ暗で先が見えない中、もがくしかない日々が続いた。この時の僕の動力は「いつか見返してやる」。
劣等感の塊だった僕に振り回された妻は日に日にふさぎ込むようになり。。。

ね、真似したくない(笑)

たとえ真似したって別の人間だもの。同じ結果にはならない。
置かれている環境も、能力も、持っているものもタイミングも、何一つ同じものなんてありえないから。

まだ牛飼いを始める前の研修時代。このイタさがフレッシュでいいね。

多くの学生が視察に来るが、牛飼いを始めた子はゼロ。
しつこく言うが畜産の新規参入はハードルが高い。

でもさ、できないなんて事は僕には言えない。諦めなさいなんて事も言わない。
「その考えはここが足りてないんじゃない?」とか、「僕だったらこうするけど。」なんて事は言えるけどね。

時代が違うって事は、その間の人たちが新しいものを付け加えてきた結果なんだと僕は思ってる。

その結果僕らが畜産を始めた頃には無かったものもたくさん出てきた。
スマホなんて存在してなかったし、インターネットと言えばyahoo。牛の飼い方も職人芸と言われる門外不出なものからデータの共有によって全体の技術の底上げはされ、誰もが普通の牛を出荷出来るようになってきた。牛の改良スピードは劇的に変わり過去の飼い方では対応できなくなっている。牛の販売は家畜商を中心としたものから個人対個人に変化した。
色々なものが少しづつ変わり、振り返れば時代が違うなんてことになっているんだよね。

当時だから通用したこと、そして今だから出来ることがある。

「とりあえず実習に入ってお金と知識と人脈を得ながら就農の準備をする」
昔からずっと言われてる事。
でもそんな誰が言い出したのか分からない、なんとなくのルートになんとなく飛び込んじゃダメだよ。
そんなのは道じゃない。

過去やってきた人の話を聞くことは大事。
でも自分たちが新しいやり方で、その時代の畜産を作らなきゃダメなんだ。
もちろん僕らも僕らより上の世代の方も「今」そうやってる。

昔は農家は全て跡取りだった。
そこから農家に住み込み研修しながら独立を模索する人たちがでだした。
今は受精卵移植師としてキャリアを積んだのち採卵をメインにした牧場を立ち上げた人、削蹄師として会社を立ち上げ次のステップとして牧場を作ろうとしている人、種畜場で働いたのち大学に編入し、また育種の世界で働いたのち牧場を立ち上げた人、などなど。
自分のキャリアを生かした新規参入者が僕の周りには沢山いる。
今までとは全く違う形で畜産業へ参入する人が出てきた。牧場の形態も様々だ。

昔のように情報が全く入らない時代じゃない。
一か八か飛び込んでそこに骨を埋める覚悟でしがみつくのも悪いとは思わない。
僕がそうだったし。
言いたいことは道はたくさんあるって事。
それを作るのは過去の事例ではなく自分だって話なんだよ。

僕自身も他人を就農までサポートする余力はないし、自分自身が成功しているとはまだとても言えない。
だけど来てくれた子には全力で応えたい。
持てるものは全部伝えたい。

だからいつでも連絡しといで。
今までうちに来た子みんなね。
そういう存在であれるよう僕も頑張るから。

そんな付き合いしよう。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。