牛に声をかける。

今日は久しぶりのホルスタイン(酪農)の削蹄でした。

ホルスタインはあの白黒の、牛乳パックに写真がのっていそうな牛です。

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普段は黒毛和種という肉牛をメインに切っているのでホルスタインの削蹄はドキドキします。
一般的には黒毛和種の方が神経質。
ホルスタインをメインに切る削蹄師さんは「黒毛は怖いからいやだ~!!」といいます。
しかし、僕はホルの現場のほうが怖いのです。

僕の行く酪農の現場は全てつなぎ牛舎。
約1畳のスペースに牛が繋がれており、その牛と牛の間に人が入って蹄を切ります。
乳牛は蹄病も多く、狭い場所で痛い足を持ちながら削蹄するのはとても危険(滑るし)。
普段の1/2から1/3の頭数しか切れません。

黒毛に比べたらあんまし儲からないし、体痛いし、全身うんこまみれになりますが(乳牛は糞が緩いのです)、僕は酪農の削蹄が結構好きです。
足の痛い牛がしゃんと立てるようになるのは何度見ても嬉しいです。

ホルスタインや黒毛和種など、牛によって毛の色が違うようにヒヅメの色も違います。
もっといえば(環境要因を差し引いたとしても)牛の種類によって微妙に形も違います。
そして蹄の質も違うんです。

たとえばホルスタインは角質がサクサクしてます。(僕らはサクい蹄と言いますが、方言なのかな?)
一方和牛の蹄は粘りがあります。
蹄の裏の角質をセンカンという道具で剥がす時、ホルスタインの蹄は層にそってベリベリっと一気にめくれます。
しかし和牛はそうはいきません。
角質の層はあってもその層にそってベリベリっと剥がれず、くっついているんです。
鎌で切っていても刃の入る感触が違います。

これは牛の品種の差で、脂の差なのかなと思っています。
同じ牛でも和牛の脂とホルスタインの脂は質が全く違いますよね。
(そこのことは以前のブログ「短角牛の蹄」に書きましたのでご参照ください。)

この緊張感のある現場で僕は一人でひたすら喋っています。
普段は本当に喋らないのですが、削蹄時は神経をとがらせながらよく喋ります。

「ほいほいほい、ばーばーばー、ほいほい待ってよ~待ってよ~、はいはい、そーそーそー、そーそー上手上手、そーそー(トントントンと鉈で蹄を落としていく)、はいはいはい、よしよし、そーそー、うんうんうん、そーそー、はいはい、いくで~、まってよ~(足を上げる)はいはいはい、ばーばー、まってよ~まってよ~はいはいはい(鎌で切っている)はいはいはいはい、そーそーそーそーやん、いいよ~、そうそうそう、はいオッケーバッチリ、ちょっとまってよ~(足を下ろして次の足をマットの上に乗せ再び鉈で叩く)はいはいはい待ってよ待ってよ待ってよ~、はいはい(トントントン)そーそーそー、はいはい上げるで~、はいはいまってまって、上げるで~、そうそうそのままそうそうそうそうばーばーばーばー(鎌で切っていく)・・・・・・」

ムツゴロウさんではありません。

そしてこれは僕の癖で、みんなはこんな喋りません。

でも、結構いいんですよ。
①まず、自分が落ち着きます。
感情的になると自分本位な足持ちになり牛は嫌がり悪循環になります。
②牛は基本的に「何をされるんだろう」と不安なので全神経を削蹄師に向けています。
そんな時に「トン!」と鉈を入れる衝撃があるととっても怖がり、パニックになる牛もいます。
常に声を出すことで牛の気も分散します。
③リズムよく削蹄ができます。
リズムよく切れないと集中力が切れ、とても疲れます。
集中力が切れるのは本当に危険なので、無意識のようでも意識して声をかけているような気もします。

削蹄の時は少し変な人に見えますが、優しく見守っていただきたいです。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。