放牧敬産牛肉「きょうふく」屠畜編

11月26日。
きょうふくを山から下ろし、僕はその足で屠場へと向かった。
(きょうふくについては「こちら」のブログをご参照ください)

きょうふくを屠畜する屠殺場は車で1時間ほど走った朝来市にある。
牛たちは朝の8時には搬入され、8時半から順番に屠畜が進んでいく。

IMG_9945
(屠場のつなぎ場。手前がきょうふく、奥がふるさと)

小さな屠場なので1日に屠畜する頭数は10頭前後。
但馬牛の経産牛を最肥育したものや、理想肥育でバリバリに肥えて神戸ビーフになるもの、ホルスタインの廃用牛、そしてうちの放牧敬産牛。
いろいろな牛がこの屠場には集まる。

うちの牛たちは放牧をしているので肥っていない。
だから2008年に最初の牛を屠畜した時には「これ健康畜か?」と聞かれたもんでした。
普通は肥やせるだけ肥やして連れてくるから、放牧した牛は屠場では病牛に見えたんです。
当然バリバリの健康畜ですが、比べちゃうと貧相なのは明らかです。。。

こっちが放牧した牛。
IMG_9930

こちらは理想肥育で飼われた牛
IMG_9926

全く違いますね。。。。(笑)

繋ぎ場から先は食肉処理のエリアになります。
IMG_0079
きょうふくは中々歩いてくれませんでした。

ここで頭をピストルでうち、すぐに放血、頭を取り、後ろ足に鎖をかけウインチで吊り下げます。
吊り下げられたきょうふくはそのままレールで運ばれ、仰向けに寝かされます。
そして四肢を取り、皮をむいていきます。

IMG_9970

その際、最初に少し胸の部分を開きます。
この瞬間、「美味しそうやんか」という気持ちが出ます。
IMG_9958

あらかた皮を剥き終わると、再び吊り下げて内蔵を取り出します。
取り出した内蔵は真下に落ち、ステンレスの坂を滑って壁の向こうの洗い場に行きます。
IMG_9979

落ちてきた内蔵はまず食用に適しているか獣医師の検査を受けます。
そして次にホルモンの粗洗いに進みます。
IMG_9983

こちらが牛の胃袋の中身です。
上の緑色したものがきょうふくの胃の中身。
下の肌色っぽいのが通常の肥育した牛の胃の中身です。
IMG_9999

青草しか食べていないのできょうふくの井の中は緑の草だけ。
肥育した牛は配合飼料がメインなので麦が見えます。
食べるものが違うので、内容物の形状も違ってきます。

中身を取り出した胃袋はこんなくるくる回る機械で汚れをざっと落とし、そして後はひたすら手作業で念入りに粗洗いが進められていくのです。
IMG_0009

このホルモンの処理と同時並行で、きょうふくの枝肉は皮を全て剥かれ次の背割りの工程へ進んでいきます。
IMG_0011

左がきょうふく、右は理想肥育の牛です。
首周りの肉付きが全然違いますね。
きょうふくは放牧していたので脂が黄色いのも特徴です。

IMG_0047
その間に次々牛たちは肉になっていきます。

たった30分ほどの時間で1頭の牛が牛肉になります。
まさに職人の世界。
この技術はいくら見ても惚れ惚れします。
この過程がない限り牛肉は生産できないのです。

僕も邪魔にならないように牛の足を吊り下げたり、放血後の床を水で掃除したり、頭を運んだり、牛の出し入れを手伝ったりするのですが、どこからどう見ても邪魔。
屠場の中をカメラぶら下げて歩いてるし。。。
それでも自分が自分の牛を最後まで見れるこの小さな屠場が大好きで、いつも最後まで居させてもらっています。

きょうふくはあっという間に枝肉となりました。
この後1週間冷蔵庫に枝肉のまま吊るして脱骨してもらい、帰ってきたきょうふくのお肉を我が家の作業場で切っていくことになります。

(つづく)

IMG_0064
(一番左がきょうふくの枝肉)


The following two tabs change content below.
田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。

コメント

  1. 元にゃっきー より:

    今年で三度目です。
    今年はやっとすこーしだけ、田中さんのお気持ちになって、感情に振り回されないで見ることができた気がします。
    それでも、記憶にとどまり、血と肉になることが、、、なんて、やっぱり考えてしまいますが。

    • 田中 一馬 tanatiku より:

      元にゃっきーさん
      そうですよね。僕も最初は感情が揺さぶられました。
      今は屠畜することをというか、肉を食べるということを自然と受け入れている感じです。
      全部見た上で、感傷的にもならず慣れもせず、「肉を食べるから屠畜をする。肉を切る。ホルモンを洗う。」と日常の一部として受け入れています。

  2. なみへい より:

    我が家でも牛(育成)を飼っていますが、
    初めて屠畜の流れを知りました。

    屠畜しなければお肉にはならないのは
    わかっていますが、実際我が家の牛が
    お肉になる工程を見届けることが
    私にはできるのか…。

    結婚して7年、結婚当時、主人に「牛は生産動物でペットじゃない」と言われたのを思い出しました。
    牛飼い日記を読んでいると、改めて色々考えさせられます。

    • 田中 一馬 tanatiku より:

      なみへいさん
      肥育農家でもない限り肉の世界って別世界ですよね。
      僕も繁殖農家なので何もわかりませんでした。
      最初はショッキングでした。
      でも何回も牛を出荷するうちに、視野が広く見れるようになったというか、そこで働く方や歴史までに思いが行くようになったんです。
      かわいそうに慣れるというよりは、自然と受け入れることができていた感じです。