牛飼いが牛肉販売をすることはお勧めしません。

今日、Emeatが届きました。
Emeatとは牛飼い仲間である群馬県の石坂恵美ちゃんが生産しているお肉のこと。
恵美ちゃんのお肉だからEmeat(エミート)

恵美ちゃんは群馬県の石坂牧場の3代目で、黒毛和牛の一貫経営を営んでいます。
一般的に和牛は子牛を産ませて販売する繁殖農家と、その子牛を買ってきて肥育する肥育農家に分かれます。
一方、一貫経営とは子牛を産ませるところから肥育してお肉にするところまで牛を育てる牛飼いさんのことをいいます。
その恵美ちゃんが満を持してスタートさせた牛肉販売。
早速注文して箱を開けたら、クオリティ高っ!!!
ウチと全然ちゃうよ。。。。農家の牛肉販売のパッケージングじゃないよ。。。スキンパックって何!?と、そこらじゅうにこだわりが見えます。
そして、こだわりの奥に牛飼いとしての土台の強さが見えます。

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一方、田中畜産は但馬牛の「繁殖農家」です。
子牛を販売するのが仕事。お肉の世界なんて肥育農家の先にあるもので、肉切るまで全然知りませんでした。
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繁殖農家が牛肉販売をするには
①子牛販売でしっかり利益を上げ、肥育も始めて一貫経営に向かう。
②肥育の事業も軌道に乗せ、利益を上げた上で牛肉販売に向かう。
これが王道です。

だけども我が家は繁殖に新規で参入して、返済も終わっていないうちからお肉だなんだとやっています。
それを見て成功事例だと、就農の相談や視察、講演依頼がきます。
後に続こうとされる方も結構います。
やめましょう。

【従来のサシ一辺倒の価値観ではなく、牛肉の多様性を!】

これもすごく分かるんです。実際にお肉を販売するようになってからさらに強く思うようになりました。
だけど、このスローガンに合わせてお肉の販売を始めることも、僕は反対です。

別に競合を恐れているわけじゃないですよ。
ウチみたいな零細と競合している時点でダメです。ホント。

牛飼いがお肉を販売するってのはひとつの理想だと僕は思います。
だけど、そんな簡単なもんじゃない。

資本があって人も雇えて、会社としての戦略で動くのでなく、個人経営の中であれもこれもやっていくと間違いなく手が足りなくなります。
そしてあちこちが中途半端になります。

牛で損をするのは早いです。
それを牛で取り返すのは至難の業。
ましてや牛での損を牛以外で取り返すのはさらに至難の業です。
だから家族経営規模の牛飼いが牛肉販売をすることは僕はおすすめしません。
首を絞めるだけだからです。

Emeatみたいに母体がしっかりとした上でやるんだったら別ですが、牛飼いは基本的に牛を飼うべきです。
牛飼いは少し脇見をしてできるほど甘くはないです。

お肉の販売を始めること自体はとても簡単。
しかし、それを続けていくこと。
牛飼いと両立させること。
そしてそれで食べていくこと。
それは全く別次元の話。

それでもどうしても肉を届けたいんだ!
上手くいこうが行くまいがやるって決めたんだ!!
本心でそう思うのならば、やればいいと思います。

うまくいくやり方なんてない。
決めてしまえばただやるだけのこと。

覚悟があるから深くもなるし、やり方も見つけられる。
だから面白さも出るって思うんですよね。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。