熊波系統の再構築②~体型の特徴~

こんにちは。
但馬牛の繁殖・削蹄師・放牧牛肉(肉屋)の田中一馬です。
前回のブログでは、但馬牛の一系統である熊波系の必要性遺伝的な選抜方法について書きました。
今回は特徴による選抜について書いていきます。

特徴による選抜方法

熊波系という「遺伝的な集団」を作っていくためには、ジーンドロッピングでの遺伝的な選抜方法に加え、熊波系らしい特徴を持った牛を残していく必要があります。
しかし、中土井系の血が強く混ざってしまった現在の熊波系では『熊波系らしい特徴』というものが一体何なのか分かりません。
昔は【肉質が良く資質品位が優れているあつた蔓(中土井系)】と、【体積感のあるふき蔓(熊波系)】という特徴があったようですが、時代とともに改良を重ねた中土井系の方が体積においても熊波系よりも優れた牛になってしまっていました。

そのために美方郡育種組合では毎年1~2回、熊波系の基礎となる牛を集めて現地検討会を行っています。
IMG_3976(2016年3月現地検討会・「ともひろ」号と。)

この現地検討会では熊波系の特徴を再確認しどのような特徴を持った牛を残していくのかなど改良の方向を定めていくことを目的としています。

熊波系の体型上の特徴

10年ほど前に茂美波(茂金波×安南土井(母方の父は茂金波)×茂金波×茂金波)という熊波の血が濃い種雄牛が作られました。
この茂美波をベースとして約8年前に始まった熊波系再構築事業。
牛を集めた当初は体型上での特徴はバラバラ。
なんとなくこの部分が熊波系っぽいかな?という程度で、「これこそが熊波系!」という牛はいませんでした。
これが熊波系再構築事業の第1世代。
進む方向はまだ見えていませんでした。

第1世代の茂美波は肉質が非常に悪く、熊波系の評価を一気に下げてしまいます。
その後、中土井系の肉質の力も借りつつ熊波の血も残すハイブリッド熊波系が登場します。
茂広波茂初波などの第2世代です。
第2世代になると、特徴が掴めなかった第1世代に比べて共通する特徴を持った牛たちが出てきました。

茂初波×福芳土井×茂幸波 (13ヶ月齡)
IMG_4299(2015.3 現地検討会)

茂広波×福芳土井×照菊波×茅菊波(3ヶ月齡)
R0310239(2015.8 現地検討会)

茂広波×照長土井×照也土井×谷福土井(7ヶ月齡)
IMG_3982(2016.3 現地検討会)

茂広波×丸富土井×照長土井×谷福土井(8ヶ月齡)「ともひろ」号
IMG_3991(2016.3 現地検討会)

現在は第3世代として丸明波茂和美波が出てきています。
丸明波×茂美波×茂丸波×照菊波×茂金波×菊照土井×茂金波(すげーな!!!)
IMG_1397

こういった現地検討会を通して熊波系には

・体の深み(胸深)がある。
・肋骨の張りが良い
・体上線が平直
・毛が密生している
・顔深がある
・体高が低い
・皮膚が厚い
・毛の色が赤い

などの特徴があることが確認されました。

特に熊波系の特徴として一番顕著な特徴が体の深み
図144

今回、我が家からは「ともひろ」号を出品しました。
母親の能力が高かったこともありますが、それにも増して非常に深みのある茂広波らしい牛だったため、子牛市場で販売せずに母牛として飼う事にしました。

同じ年には「ともひろ」の姉が受精卵(代理出産)で生まれており、昨年12月に宮崎県に繁殖牛として買われていきました。
この子も同じように深みと幅のある牛で、波系の特徴がよく出た牛でした。
IMG_0716

また、この2頭の親である「ともこ」号。
丸富土井×照長土井×谷福土井という掛け合わせで一見土井系で固められた牛のように見えますが、始祖牛を遡るジーンドロッピングでは熊波系(G8)の分類となります。
IMG_4251(2015.3 現地検討会「ともこ」号)

こういった体型上の特徴と遺伝的な分類の両面から牛を残していくことで、熊波系の再構築を進めています。

おまけ、中土井系と比べてみよう

牛を見るときは全体像やバランスだけでなく、体の各パーツごとに特徴を見ていきます。
だけど牛って同じ系統でも1頭1頭姿が違うので、並べて比べてみないと特徴はわかりにくいんです。
写真ではありますが熊波系の特徴が出ている牛と中土井系の特徴が出ている牛を比べてみると、なんとなく違いが感じられますよ!

下の2枚の中土井の強い但馬牛と上の熊波系の但馬牛。
見比べて違いを探してみてくださいね!!

IMG_8572

IMG_0175

(つづく)
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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。

コメント

  1. 佐藤玲史 より:

    お疲れ様です。
    熊波系をわざわざ選んだのは、そこに可能性の広さを感じたから。
    熊波は、岩手の菊谷や事業団の安福165-9、宮城の茂洋らのように、
    係る相手を十分に立ててなおかつ胸深のある牛になっていくと思っています。
    惜しむらくは、現在残っている種雄牛がほぼ茂金波の後継であること。
    でもそれは、全国に広がる安美土井の血からすればそれほどでもないか・・・
    高千穂の牛の改良に役立てるように私も頑張ります。