放牧場でなかなか捕まえさせてくれない牛の捕まえ方

こんにちは。
但馬牛の繁殖・削蹄師・放牧牛肉(肉屋)の田中一馬です。
先日愛知県でシマウマが逃げたというニュースを見ました。
逃げるシマウマは捕まえられませんが、逃げる牛なら捕まえられます。
(いろんなパターンの牛の捕獲方法は「こちら」から。)

関係性で捕まえ方は変わる

牛の捕まえ方は牛との親密度や飼育環境によって変化します。
放牧場での牛たちは人の手を借りなくても生えている草を食べて生きていくことができます。
しかし何ヶ月も放牧したまま牛を放置していると、人間との関係性が薄れ野生化してしまう牛がでてしまいます。
逃げる場所が無制限にある放牧場で、野生化した牛を捕まえることは非常に困難です。
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そのために牛の好きなフスマや配合飼料を持って定期的に放牧場へ行き、安否確認しながら牛との関係性をキープしています。
関わりを常に作ることで牛との距離を適正に保つことができるのです。

しかし、そんな中でも人と牛との距離は様々。
人間と一緒で牛にも色んな性格の子がいます。
馴れた牛は自分から人間に近寄ってきて「これでもかっ!!」というくらい舐めてきます。
一方、牛舎では近寄ってくるのに放牧場のような広大な土地に放すと距離をとる牛もいます。
中には何をしても全く馴れない牛も。。。。

こういった牛との親密度に合わせて牛たちの逃走距離が変わってきます。
逃走距離とは自分(牛)を中心とした絶対不可侵ゾーン。
0mの牛もいれば10mの牛もいます。

逃走距離1mの牛は少し時間をかけると馴れるので捕まえやすく、10mになると難易度は一気に上がります。
一人で捕まえるのはプロでも超至難の業。

微妙なのが逃走距離6mくらいの牛です。
近づけそうなんだけれど決して近づけさせない。
いつでも逃げられる距離で様子を伺う。。。
こういう牛は駆け引きが大事になってきます。

どんな牛でも言えることですが捕まえるコツは「ビビらせない」「焦らない」です!
それでは、実際に逃走距離6mの牛を捕まえてみましょう!!

逃走距離6mの牛の捕獲編

この牛は「よしひさ07」という牛です。
となりの農家さんの放牧場に紛れ込んでいたので捕まえに来ました。
15mほど先で草を食べています。
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あ、バレた。
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ここで目を合わしてはいけません。
「君の事なんて見てないよ~。ただ歩いているだけだし。」という雰囲気で。
図3

牛に直線で向かっていかずに、ちょっと進行方向をずらして近づきます。
図2

しれっと、5mまでは近づくことができました。
いよいよ逃走距離に入っていきます!!
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牛を捕まえるには頭(鼻輪)をおさえなければいけません。
正前から行くと牛は逃げるので、遠方から近づくときは斜め後ろ→側面が基本。
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捕獲可能な距離に入ってから手を伸ばすと、せっかくのチャンスに警戒させてしまいます。
そのため前もって手は挙げておきましょう。
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「ばぁよぉ~ばぁよぉ~」と優しく声をかけ、ゆっくり、さりげなく近づきます。
この手を「恐いもの」ではなく、「恐いんだけれど興味あるんだよな。。」といった気持ちにさせることが大事です。
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バレても止まったりせずゆっくりそのまま。
あくまでたまたま近くを通った人を装ってくださいね。
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牛が顔を上げていつでも逃げられる体勢に。。。
でも、焦って尻尾を掴んじゃ絶対だめっす!!
焦る人はきらわれます。
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視線は牛ではなく遠くを見ながら、止まらず、焦らず、自然体で。
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おおっ!手が気になってます!!!チャンスか!?
これ、牛の真横にいるように見えますが、まだ牛との間には2mほどの距離があって手が届きません。
ここで焦って鼻輪をグッと捕まえにいってはダメです。
鼻輪に手がかかるよりも速いスピードで牛は彼方に逃げて行ってしまいます。
グッと我慢!!
ここポイントです!!!
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せっかく近づけましたが、「やっぱ恐い!」と牛は旋回して逃げようとします。
決して慌ててはいけません。
想定内です。
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真後ろから追うと逃げるので、やや斜め後ろから他人のフリ再開です。
歩くスピードは一定に。
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あくまで普通に。
焦ると牛は逃げます。
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常に視線は牛から逸らしましょう。
「お前を狙ってるんだ!」と思わせないためです。
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逃げる牛にスピードを上げずついていくには牛の行き先を人間側が誘導しなくてはいけません。
微妙な体の動作で自然なフェイントを入れ、逃げ道を限定します。
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そして常に牛の横&内側を歩きます。
こうすることで外周を歩く牛の距離と、内側を歩く人の距離に差が出てき、牛のスピードに合わせて人がスピードを上げなくてもよくなります。
(人のスピードが上がると牛は焦る)
牛がスピードを上げると人はもっと内側を歩き、牛がスピードを落としてくると、すこしづつ外側に移動し牛に近づいていきます。
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牛が「こいつだったらちょっとっくらい近づいてもいいかな。」
ってな気持ちになるまで焦らず共に歩きます。

距離が近づくまで根気よく根気よく。
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そしてついに牛の体にタッチできる距離まで縮まりました!
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この時も焦らない!!
焦ってはすべてが台無しです。

100%捕まえられる!と思う所まではなかなかいかないので、90%は捕まえられると思うとこまで粘ります。

そして残りの10%に今までためてきたパワーで焦らず素早く一気に捕獲します。

こうして6mの牛の捕獲が完了です!!!!
図1

次回は逃走距離10mの牛を捕まえてみます。
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田中畜産 代表 田中一馬

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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。