グラスフェッド牛肉の課題と可能性

こんにちは。
但馬牛農家の精肉店、田中畜産の田中一馬です。
㈱東京宝山の荻澤さんからドキドキするお肉が届きました。
それは。。。

グラスフェッドの褐毛和種

草100%で育てた、36ヶ月齡の褐毛和種のお肉です!!
図1(褐毛和種は和牛の一種で、熊本と高知が有名な原産地。)

送っていただいた牛肉は阿蘇の大草原を活かした周年放牧で、32ヶ月齡まで飼育された牛。
これだけでも唯一無二の取り組みなのですが、そこからさらに残りの4ヶ月をお肉の水分調整のために生草ではなく乾草で飼育したそうです。
この話を聞いてすぐ荻澤さんに連絡をし、お肉のお願いをしました。
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個人販売は想定されていない中、無理を言ってトウガラシを送ってもらいました。
トウガラシはウデの一部、赤身で香ばしさの強い部位です。
もう、肉を見ただけで興奮します!!!
IMG_10491グラスフェッドの褐毛和種を食べるのは初めてです。
あ、グラスフェッドってご存知ですか?

グレンフェッドとグラスフェッド

肉牛の飼い方は大きく2種類に分けることができます。
穀物メインで肥らせるグレンフェッドと、草だけを給与して肉にするグラスフェッドです。
現在の国内で生産される99.9%の牛肉はグレンフェッド
IMG_84081(グレンフェッド・黒毛和種/但馬牛/30ヶ月齡)
穀物を多給することによって効率的にサシや肉の量を増やすことができます。

一方、グラスフェッドの牛肉生産は国内ではほぼ皆無。
209(グラスフェッド・黒毛和種/但馬牛/50ヶ月齡)

どうしてグラスフェッドの牛肉は少ないのでしょうか?
グラスフェッドの課題を見てみましょう。

グラスフェッドの課題

一見、草だけで飼育すると「なんか自然っぽい。」「なんか安全な感じがする。」「なんか牛本来の姿だよね。」と、イメージがよく見えますよね。

だけど、僕ら畜産農家は牛のプロなので「なんか~っぽい」といったイメージで牛飼いをしません。
グラスフェッド牛肉の生産には様々な課題があります。
8つにまとめてみました。

グラスフェッド牛肉の課題
①肉の量がとれない
・穀物と比べ栄養価の少ない草を食べて育つため、普通の牛に比べ5割程度の肉量しか取れない。
・筋引すると小さいブロックとなってしまい、単価の安い切り落としやミンチばかりになってしまう。
②肉が硬い、霜降りが入っていない
・運動をするので赤身が多く、かたい肉になってしまう。
・水分の多い青草を食べる為に締まりのない(ドリップのよく出る)肉になる。
③広大な土地が必要
・1頭の牛を育てるのに1ha(100m×100m)もの土地が必要。
・狭い日本の国土では多くの畜産農家が取り組むのは不可能。(阿蘇や北海道なら可能かも。)
④牧場作りに手間と時間がかかる
1箇所に広大な放牧場を作るには既存の草地では不十分で、山などの未開拓地の整備が必須。
間伐、牧草の播種など牛に快適な放牧場となるまでに10年以上かかる時もある。
⑤飼育マニュアルがない
頭数と事例が少ないため、品種に合わせたグラスフェッドのマニュアルは存在しない。
牛は肉になるまでの期間が長く、同じ飼い方をしても個体差が大きく出る。
何万通りとある飼育方法の中から新しい方法を見つけるには莫大な時間とそれに取り組む頭数が必要となる。
⑥おいしい食べ方、熟成法がわからない
統一された飼育マニュアルがないため、グラスフェッドの肉質は取り組む農家によって様々。
その中で肉質に合わせた食べ方や牛肉の熟成方法を作り、提案していかなくてはいけない。
⑦既存の流通では評価されない。
グラスフェッドの牛肉は肉色が濃く変色しやすいためショーケースでの販売には不向き。
さらに流通量が少なく定期定量出荷が出来ない。
そのため一般流通が難しく枝肉市場で評価されない。
⑧生産から販売までの回転が遅い
種付けをして子牛が生まれ、肉になるまでに約5年。
さらに並行して牧場作りに10年、牛肉の流通システムを作るまでかなりの時間がかかります。

だからグラスフェッドは「これから来るよ!」なんて言われていながらも、何十年も普及しないのです。

グラスフェッドの可能性

しかし、グラスフェッドのお肉がダメなのかといえば、僕は全くそうは思いません。
スタンダードな市場にはなり得なくても、SNS全盛の現在フットワークの軽い個人の牧場なら何とでも動けます。

僕は2008年から黒毛和種(但馬牛)でグラスフェッドの牛肉生産に取り組んできました。
(最初に生産したグラスフェッドについて書いたブログは「こちら」)
そのなかで一つ確信したことがあります。
それは、「グラスフェッドは美味しい!!」ということ。
少なくともグラスフェッドにしか出せない美味しさが存在する。
同じ赤身でもグラスフェッドとグレンフェッドの味は全然違う。

肉量は取れない。
ドリップも多いし、筋引きした後のブロックが小さすぎて売りにくい。
でもやり方次第でグラスフェッドの魅力を伝える方法はいくらでもあると思う。
(2016年はカットを工夫してみました→『放牧敬産牛肉「きょうふく」カット終了~』)
次回の販売からは食べるシーンごとの提案をしたいな~って考え中です。。。

今回の東京宝山さんのお肉は、32ヶ月間野草のみで飼い、最後の4ヶ月は水分の低い乾草で仕上げています。
更に熟成で有名なマルヨシ商事さんによって肉の状態に合わせた2週間の吊るし熟成を行っています。
グラスフェッドというやり方は同じでも、食べるところまでの過程でお肉は全く別モノになる。
牛肉って面白いよね。
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確かにグラスフェッドには課題がたくさんあります。
一方でグラスフェッドの牛肉にはまだまだ見えていない魅力が詰まっている。
その中で生産者と精肉業者が一緒に牛肉の可能性を追求するスタイルこそがグラスフェッドの魅力を引き出す鍵なのだと思っています。

お肉の感想

先日グラスフェッドで飼われたブラウンスイスのお肉を食べましたが、但馬牛のグラスフェッドとは全く違う味で驚きました。
(その時のブログ→「グラスフェッドの但馬牛とブラウンスイスの肉の違い」)
今回の褐毛和種もまた別の味。
どちらかと言えば黒毛和種よりですが、黒毛とも違う褐毛の味が感じられます。

同じグラスフェッドでも味については品種の差が非常に大きい。
今回もその事をはっきりと感じることができました。
リンゴだってふじとジョナゴールドとじゃ味は全く違うもんね。

昔のグラスフェッドのイメージは外国の牛のイメージでした。
しかし今は国内の色々な品種のグラスフェッドを楽しむことが出来る!!
流通量が少ないから主流にはなりえないけれど、間違いなくひとつのジャンルになるなって強く感じています。

妻は「私は黒毛のグラスフェッドの方が好きかな~」と言っていましたが、僕はとても美味しいと思いました!!
うちで販売したいくらい。。。
子供もバクバク食べてましたよ。

阿蘇山の草原で育った褐毛和種。
グラスフェッド・グレンフェッド関係なしに、熊本の褐毛和種のお肉をもっと食べてみたくなりました。
みなさんも是非、『熊本あか牛』食べてみてくださいね!!!!

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荻澤さん、ありがとうございます!!

東京宝山のブログは「こちら

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田中畜産 代表 田中一馬

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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。