「最近はだれもええ肉を食べなくなった。」

こんにちは。
但馬牛農家の精肉店、田中畜産の田中一馬です。
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昨日フェイスブックで、ある新聞記事を目にしました。

産肉能力検定「化け物級」

長崎県の勝乃幸という種雄牛が霜降りの能力日本一になったという記事です。
(長崎県のプレスリリースは「こちら」)

2016.4.29 長崎新聞の記事です。↓↓↓

県の種雄牛《霜降り度》全国新記録 産肉能力検定「化け物級」

県は28日、県肉用牛改良センター(平戸市田平町)が飼育する種雄牛「勝乃幸」(5歳)が産肉能力検定を受け、霜降りの度合いを示す数値(脂肪交雑)が全国歴代トップに輝いたと発表した。
枝肉のうち、最高ランクの5等級が占める割合「5等級率」も県内歴代1位だった。
(中略)
これまで脂肪交雑(最高値12)の全国1位は鳥取県所有の種雄牛が2015年に出した9.7だったが、これを上回る10.3で記録を塗り替えた。
脂肪交雑の県内歴代1位はいずれも同センター所有の種雄牛「金太郎3」「百合幸」の8.4。
枝肉重量は509㌔(県平均479.3㌔)。
高級牛肉とされる4,5等級の割合を示す上物率は100%(同78.2%)で5等級率は91.7%(同30.8%)と群を抜いている。
県肉用牛改良センターは全国トップの「勝乃幸」の凍結精液について、6月からの県内畜産農家を対象に本格供給する予定。
県畜産課は「脂肪交雑といい、5等級率といい、化け物といってよい成績。長崎和牛のブランド力向上に期待したい」としている。
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つい1年前、鳥取県の白鵬86の3がBMS9.7と驚異的な成績を出したばかりなのに。。。
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勝乃幸の上物率は100%、5等級率は91.7%は驚異的を超えてまさに化け物級と言えます。

『ええ肉=霜降り』なのか?

和牛の改良スピードは年々加速し、サシが入る能力は上がり続けています。
また現在の霜降り具合による枝肉の評価基準は、大きな流れになっておりそうそう変わるものではありません。
だけど、サシが価値にならない日も必ず来るんだろうなって思う。

サシより赤身が良いっていう話じゃ無いよ。
サシの価値は絶対的ではなく相対的なものだから、サシを追及するほどサシの多さは価値にならないようになるってこと。

家畜の改良は消費者ではなく農家のための改良。
でもそれって本当に農家のためなのかなって思うことも多い。

ちなみに兵庫県(但馬牛)のスーパー種雄牛「芳悠土井」は脂肪交雑6.3。
全国から見ればパッとしない数字です。
但馬牛もサシを求めて走っているが、但馬牛が評価されているのはサシの多さではない。
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僕ら牛飼いはよくサシの入る肉を「ええ肉」と言う。
そして「最近はだれもええ肉を食べなくなった。」と言います。
そう言いながらも僕らは「ええ肉」を目指して牛飼いをする。
それが市場での評価であり、儲けだから。
僕もその流れの中で牛飼いをしている。

だけど『ええ肉を食べなくなった』のは健康志向でも、赤身ブームでも、消費者が分かっていないわけでもない。
なぜ「ええ肉」が食べられなくなっているのかはシンプル。
消費者にとってええ肉ではないからだ。
牛飼にとってのええ肉でしかなくなってきているという事。

僕の浅知恵では牛肉業界の方向性など示せない。
ただ、自分が届けるお肉は食べる人を向いて生産したいという思いだけだ。

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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。