育児放棄した親牛と子牛の関係性を取り戻すために今できること。

こんにちは。
但馬牛繁殖農家の精肉店、田中畜産の田中一馬です。
一昨日、少し予定日より早く子牛が生まれました。
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しかし親が乳を飲ませてくれません。
飲ませないどころか角で子牛を突きあげます。
親子であっても関係性って難しいですよね。
僕らでもそう。
「種を残す本能や、コミュニティを作ることで生存率を高める。」
そんな遺伝情報が関係性のベースなのかもしれない。
だけど関係性ってそれだけじゃないと思うんです。

家畜化で本能が薄れてきた?

僕が牛飼いを始めた14年前、子煩悩な親牛が多かった。
子煩悩を通り越して攻撃的な牛までいたくらい。
普段おとなしい親牛であっても、出産直後になると子牛を守ろうと角をむけて人に向かってくる。
出産の時は牛が興奮するので畜主以外は牛舎にすら入れなかったし、産室に入ることなんて畜主であっても駄目な牛もいました。
まさに種を守る「本能」ですね。
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しかし、最近の牛は改良スピードが上がったことによるものか、野性味が無くなりました。
産んだ後に人に向かってくる牛なんて皆無。
それに伴い育児放棄する牛を以前に比べて見かけるようになりました。

子牛を拒絶してしまう親牛

こういった育児放棄をしてしまう親牛は、子牛に対して攻撃的です。
角で突いたり、乳を飲もうとする子牛を蹴り飛ばしたり、ひどいときには蹴り飛ばした子牛を踏んで死亡させてしまうこともあります。
敵対心があるというより、怖がっていたり、興奮してパニックになっている場合が多い気がしています。

普通であれば出産後に親牛は子牛を舐めます。
そして子牛が立つと、乳を飲むのをじっと待つだけでなく子牛のお尻を鼻で押して乳の方に誘導したりします。
(生まれたばかりの子牛は乳の飲みかたがよくわからず、何度も転けては立っての試行錯誤。)

しかし、育児放棄した親牛は子牛を蹴ってしまいます。
蹴られた子牛は立ち上がり再び乳を飲みに行きますが、うまく立てない中で何度も蹴られます。
そうしているうちに子牛は乳を飲むことをあきらめてしまうのです。
乳を飲めないと子牛はどんどん弱々しくなり、時間の経過とともに自力での哺乳は難しくなります。

この悪循環が2日も続けば関係性を構築することはほぼ無理。
こういったケースでは親子を離して人口哺乳が一般的です。

ちなみに牛に本気で蹴られると、こうなります。。。。
(鼻骨が折れて鼻が曲りました。。。)↓
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(靭帯も2回切っちゃいました。)↓
靭帯断裂でギプス
危険なんですよー!!!

でもね、
人がちょっと手を加えれば親子の関係性が再構築されるケースは多いんです
ポイントはたった1つ。
子牛の気持ちを折れさせないです。

関係性を再構築するちょっとしたポイント

親牛が子牛を蹴る場合

子牛が「乳を飲みたい!」という素振りを見せたらまず親牛を繋ぎます
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次にくつわを噛ませ母牛の気をそぎます。
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これだけで乳を飲ませる親牛もいますので、早い段階で試してみてくださいね。

それでも子牛を蹴ってしまう場合

牛が蹴ろうと足を上げた瞬間に鼻輪を持って「ばーばー」と声をかけたり、顔をパンパン叩きます。(なぐっちゃだめですよ)
蹴ったことを怒るのではなく、蹴ろうとした瞬間に他の刺激で気を紛らわせる感じです。
こうすることでたいていの牛がその瞬間は乳を飲ませてくれます。
人間が牛の前に立つだけでも全然違いますよ。
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これでもどうしても駄目な牛

色々な方法を試しても中々上手くいかない時は「肢持ち哺乳法」がお勧めです!!!
こちらのブログに詳しい方法が書いています参考にしてみてくださいね!→「親牛が子牛に乳を飲まさないときの対処法
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大切なのは子牛の気持ちを折らさず、乳の飲み方を覚えてもらうこと。

一度でもしっかり乳を飲んだ子牛は乳の飲みかたを覚えます。
乳を飲んでいるため体力もつき、次回多少蹴られてもスイッチが入っているので負けずに飲みに行きます
これを繰り返すことで、母牛も子牛を認識していきます。
1日30分を3~4回。
これを3~5日もすれば大丈夫!!
大抵の牛の親子関係は回復していますよー。

ちょっとしたことです。
分娩初日に人が少し介入するだけで、多くの牛の親子関係を修復することができるのです。

こちらは冒頭に挙げた牛の分娩2日目の様子。
人がいないとまだ足を上げますが、人が入るだけで乳を飲ますようになりました。


翌日には人の介入なしに哺乳を許容するようになりました。
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最初が一番大事。
いかに子牛の気持ちを折らせないかが僕らの仕事。
子牛が親を求め続ければ、母性は復活します。

関係性は育むもの。

そんな姿を見たびに素敵だよねって思うんです。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。