繁殖農家が理想肥育をして感じたこと

こんにちは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。
田中一馬
この、いつも冒頭に書いている『但馬牛繁殖農家のお肉屋さん』という言葉。
畜産に関わる方なら「ん??」って思うかもしれませんね。

繁殖農家→肥育農家→お肉屋さん

牛肉の流通は

①母牛に子牛を産んでもらい、その子牛を8か月飼育して出荷する繁殖農家

②子牛市場で子牛を導入し、その後2年間肥らせて肉にする肥育農家

お肉屋さん

と言う感じで進みます。

3つとも全く別の業種です。

田中畜産は②→③の『但馬牛肥育農家のお肉屋さん』ではありません。
②をすっ飛ばして①③の『但馬牛繁殖農家のお肉屋さん』。

だから、「お前は順番を間違えている!!」とよく言われます。
でもね、繁殖農家だからできるお肉屋さんもあっていいよね!って思うんです。
あ、脱線した。。。

そんな繁殖農家の僕が初めて挑戦した肥育農家の領域「理想肥育」
(詳しくはこちらのブログをご参照ください→『繁殖農家の初めての理想肥育~多香音出荷~』)

昨日、その牛(多香音)の競りがあったので夫婦で神戸西部市場に行ってきました。
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神戸市中央卸売市場西部市場

兵庫県には牛を屠畜できる食肉市場が神戸、加古川、姫路、三田、淡路、和田山と6か所あります。
その中でも一番大きく、神戸ビーフの取引量が多いのが神戸市中央卸売市場西部市場です。
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神戸では毎週月曜日に但馬牛(神戸ビーフ)の競りが行われています。
この日は39頭の但馬牛が出品されていました。

この中に多香音のお肉が吊られています!!
さすがに少し緊張しますね。。。

※神戸市中央卸売市場西部市場での市況等については『こちら』のHPで見ることができます。

多香音の枝肉

さあ、いよいよ多香音の枝肉とのご対面です。
ドキドキしますね。
いいですか?
いいですか?
いいですか?(しつこー!!)
ではでは、どうぞ~!!!
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おおおおおーーーー!!!ん?ちょっと厚みがないかな。。。

でも気になる格付けは、A5-10(12が格付けの最高ランク)、枝肉重量406kgと大健闘!!!!
文句なしの神戸ビーフです!!

1356神戸ビーフ(神戸肉)のスタンプ

1357枝肉にはいろいろな印がついています。牛肉では国内唯一の地理的表示G1も!!

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神戸中央畜産荷受㈱の中川さんに枝肉の見方を教えていただき、中勢以の加藤さんに多香音のお肉を講評いただき、削蹄先の農家さんから「溜まってるから早く来いよ!」と言われ、大学の後輩と少し喋ったり、多香音の枝肉やその他の枝肉をあれこれ見て、あっという間に3時間。

気が付けば競りの時間となりました。

電光掲示板には生産者の顔写真と枝肉の情報が掲示されます。
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ハンパない価格に実感がわきません。。。
1369競り終われば想像以上の価格!!!

多香音を価格と言う形で評価いただけた時、「あぁ、ここでお別れだね。。」って自分の心の中で一つの区切りがつきました。

数字だけでは見えないもの

多香音の格付けはA5‐10と申し分のないものでした。
だけど、お肉って格付けだけじゃないなってことも改めて感じることができました。

こちらは多香音のお肉、A5‐10。
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一方この枝肉。
格付けはA5‐9。多香音より格付けではワンランク下。
しかも一番メインのロース芯にシコリがあります。
シコリは脂肪のように見えて硬くて食べられない場所で、これがあることで枝肉価格は大きく下がります。
だけど、枝肉単価はこちらの方が高い。
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こちらは同じA5‐10の神戸ビーフ
多香音と比べると張り(肉に厚み)があり、バランスも良く、脂肪の質もいい。
同じ10番でも枝肉単価は300円/㎏以上も高いです。
図2

格付けだけでいえば多香音は今回の競りではトップでした。
だけど実際に枝肉を見比べると、張りがなく薄い。
脂肪の質も固め。

そこらへんも肉屋さんはしっかり見ている。
だから、A5の中では多香音の単価が一番安かったんだと思う。
(あ、税込4000円なのでめちゃ高いんすよ。比べたらって話ね。)

格付けは大切なモノサシだけど、一つのモノサシだけで語れるほど牛肉って浅くない。

面白いな。
本当に、知らないことがあるって面白いよね。

牛と肉を見て感じたこと

今回の競りで、肉屋さんの求める牛と僕ら繁殖農家に数字として入ってくる情報とには大きな差があると感じることができました。

これは実際に多香音を生体で搬入した時にも思ったこと。
競り市名簿には枝肉重量が406キロ、格付けがA5‐10などとそれぞれの牛が数値で表現される。
それを見るとついその牛の事を分かった気になってしまいます。
だけど、数値で表せられるのは牛の一部でしかない。

実際、割る前の牛の体型を見るとみんなバラバラだもん。
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それぞれ違う牛で、違う農家が飼っているんだから当たり前のこと。
それは牛飼いだし、削蹄でいろんな農家の肥育牛を切っているからわかる。
数値に表れない違いを知ってこその数値なんだよね。

そして、お肉もおんなじなんだろなって思った。

数字じゃなく、牛を見て肉を見て、自分の目で判断し作っていく。
そんな牛の面白さを改めて感じた1日でした。

牛の能力をもっと引き出せるよう、牛の足を引っ張らないよう、これからも牛を見て勉強していきます。

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多香音、31カ月間ありがとうね!!


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。