子牛の第四胃穿孔

牛を飼っていて一番やるせないのが事故だ。
昨日、生まれて間もない1頭の子牛が死んでしまった。
4日ほど下痢をしていたのだが、点滴をするほどでもなく電解質(ポカリのようなもの)と生菌剤(ビオフェルミンのようなもの)、ネッカリッチ(炭粉末)などの一般的な下痢の治療で対応していた。
子牛も下痢はするものの産室の中をトコトコ走ったりしていた。

朝9時頃に急にお腹を蹴って暴れだす。
時間とともにお腹が張り、糞が出ない。
症状から腸捻転・腸閉塞の可能性を示唆される。

子牛の段階での腸捻転は聞いたことがある。
はしゃいで転んだ拍子に腸が捻れ、急にお腹を蹴り悶絶する。
しかし、バタバタ転げ回っていたりしているうちに大抵は勝手に治る。
点滴で治る事もある。

しかし16時頃、子牛は死んだ。
自家保留して母牛にする予定だった牛で、生まれ落ちからすぐ乳をの飲む活力のある子牛でした。
残念でならない。
生後10日だった。

昨日は日曜日で家畜保健所が空いていないため、1日おいた月曜日に保健所で解剖をお願いした。

牛が死ぬと様々な思いが交差する。
この高値相場の中での経営的な思い。
牛にただただ申し訳ないという思い。
丸々1年間やってきたことが無になる喪失感・無力感。
牛を飼うことへの恐怖感もある。

牛の事故には出来るだけ家畜保健所での病理解剖をお願いしている。
事故から学ばなくてはいけないから。

解剖が始まる。
気持ちは切り替えているが、何とも言えない。
かわいそうなことをしたという気持ち。
申し訳ないという気持ち。
そして、自分に過失はなかったと思いたいがための「どうせなら先天的な奇形であってほしい」という書くのも恥ずかしい気持ちもある。

夏場ということもあってたった1日でも腐敗が進み、解剖しても正確なことは分からない。

明らかだったのは第四胃に100円玉大の穿孔があったこと。
これが直接的な要因ということ。
ただ、なぜこんな穴が空いていたのかは分からない。
下痢による第四胃潰瘍からの穿孔が考えられたが、第四胃に潰瘍の形跡はみられず(腐敗が進み分かりにくいのもある)、下痢の程度からも腑に落ちない点はある。
生きていたときの様子からは腸捻転も考えられたが腐敗が進みよくわからなかった。

しかし、分からないながらも考えなくてはいけない。
たとえ先天的な奇形であっても自分の責任だと思っていかなくてはいけない。

今回、生後間もないということで子牛側の要因というよりも親牛の飼養管理が大きいと思っている。

もう一度、牛の健康の定義を見直さなくてはいけない。
基本の親牛から。

今日からまた事故ゼロ目指して牛飼いをします。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。