牛は家族ではありません~擬人化するより違いを知ること~

こんにちは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。

「牛は家族ですか?」

そう聞かれると僕は「違います」って言うと思う。
家族はやっぱ家族だ。

うちの家族はみんな牛好きっす。

家族のように牛に愛情をもって接することに違和感はない。
むしろ素晴らしいと思うし、僕もそうありたいと思う。

ただ、牛を擬人化するのはちょっとずれてるよなって思うんだよね。

だって牛は牛だもの。

以前から動物愛護を声高に叫ぶ人ってなんて胡散臭いんだろうって思っていました。
間違いなく僕も胡散臭い部類なので人のことは言えないんだけど、違和感の根底にあったのは動物への擬人化だったんだと思う。

牛と人は違う

あたりまえなんだけど牛と人は違います。
人だって価値観はバラバラなのに、ましてや違う生き物。

もちろん共通するところもある。

でも、共通するところがあるからこそ、通じていると思ってしまうからこそ、自分と同じなんだって思ってしまいがちなんです。

人でもあるよね、良かれと思ってやったことが勘違いだったって。
言葉すら通じない牛ならなおさらです。

例えば自分の子供が一人部屋で泣いていると、親としてすごく心配になります。
子供に何が起きたのかとにかく考える。
真剣です。

でも、動物に対してだとそこまでの真剣さはない。
つい自分の感覚を押し付けて分かった気になりがちです。

動物にこそ真剣に向き合わないと気持ちなんてわかるはずもないのにね。
擬人化とは自分化。
安易に自分の感覚を押し付けることでもあると思う。

牛と人間では見ているものも違う。

それは視覚の広さや色の感じ方と言ったことではなく、同じものを見ていてもそこから感じる情報が全く違うってこと

例えばこの動画、押しても引いても持ち上げても牛は動かない。
でもホースをまたいだ後はとことこと歩くようになります。

人も牛も見ている景色は同じです。
「なんだそんなこと」「たかがホースやん」、そう思っていることの違いが人と牛の違いです。
この大きさににどれだけ気付けるかだと思う。

擬人化することが悪いことだとは思いません。

擬人化することで自分の心を満たすこともできるかもしれない、愛情が湧きもっと相手の視点に立てるようになるかもしれない。

ただ、やっぱ人じゃない。

安易な擬人化ほどその動物の姿を見えなくさせる気がする。

僕は自分本位な人間です。

だからずっとわかんない相手として牛と接していけたらいいなって思ってます。

分かんないから牛って面白いんだしね。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。