放牧は持続的な農法だって思ってませんか?搾取型放牧から循環型放牧へ。

こんにちは。
但馬牛繁殖農家のお肉屋さん、田中畜産の田中一馬です。

今日も放牧場の整備に来ています。
ここは豊岡市にある万場スキー場。
メチャクチャ景色がきれいで僕はこの放牧場が大好きです。

でも、実はよーく見てみると草の生えていない地面が結構見えています。
草の種類もススキとワラビがメイン。
いろんな種類の草が生えていません。

特にワラビは牛にとって毒草。
根絶が難しい草で、放牧場の厄介者なんです。。。

野草地放牧はコントロールが必要

放牧って牛にとってすごくいい環境であったり、何か持続的で循環しているやり方に見られがちです。
しかし、放牧することで循環につながっているかと言えば必ずしもそうでないのかなって思っています。
むしろ農法としては循環と真逆の立ち位置であるケースが多い。

そんなことをふと思ったので、その場で動画にしました。(9分あります。ながーーーー!!)
見れない方のためにこのブログにも書いていきますね。

放牧によるススキ草地の変化

ここ万場スキー場は一般的な野草地で、草のほとんどがススキです。
今年で放牧は4年目。

実は元々、ススキの草丈はこんなに短くはありませんでした。

放牧地のススキ畑

放牧をするまではこんな感じのススキ畑。
少しわかりにくいですが、ススキの草丈は放牧地に比べて倍以上もあります。
牛が食べることでススキは毎年毎年短くなっていきます。

放牧地の外にあるススキ畑

放牧をする前のススキ草地は基本的には伸び放題。
秋になると2m以上もの草丈になります。
このようにススキが大きくなり過ぎると、草の陰で地面に光が入らなくなるんです。

その結果、裸地はあるのにススキ以外の草が生えることが出来なくなってしまいます。

こういった草地は草が多いように見えて実は少ないんですね。

そこに牛を放すと、ススキの草丈はどんどん短くなり、日陰で隠れていた裸地に日光が入ってくるようになります。
その隙間に生えてくるのがワラビです。

ススキ時代からワラビ時代へ

ススキの株が小さくなるにつれ、増えてくるのがワラビ。
このワラビが厄介者で、牛が食べると中毒を起こして死亡するケースも起きています。
僕も就農1年目でワラビ中毒で1頭の親牛を廃用にした経験があります。

更に厄介なのが、なかなか途絶えないって言う事なんです。
例えばワラビ専用の除草剤と年1回の草刈りを併用してもワラビは途絶えません。
1年に5回以上の刈り取りを3年続けると激減するとは言われていますが、広大な放牧場のワラビをそれだけこまめに刈るのはものすごい労力です。

ここで放牧を続けていくと、ススキの草丈はどんどん短くなります。
裸地だった場所には次々とワラビが生えてくるようになり、最終的にはこんな感じのワラビ畑になります。

す、すごーーーーーーーーー!!!!!

これはロッジの方がこまめに草刈りをしたことでススキが絶え、ワラビだらけになったケース。

このように一度ワラビが増えると、今度はワラビの陰によって日の光が入らなくなり、次の草が生えてこなくなります。

裸地が目立ちますが葉が覆い繁っているため他の草が生えません。

放牧でススキ草地に光が入り、そのスペースをワラビが占有する。
ワラビは牛も鹿も食べないので広がり続け、最終的にはワラビばかりの草地になってしまう。

こうなってしまうと牛を放すことなんてとても出来ません。。。

手入れされていないススキ草地(右)と手入れされ過ぎて出来たワラビ草地(左)

搾取型放牧から循環型放牧へ

僕の住む但馬地域には多くの放牧場があります。
そのほとんどが自然に生えている草を牛に食べさせるやり方です。
しかし、どの放牧場も今やワラビだらけ。

野草は品種改良された牧草と違い、再生力が弱い草です。
3~4年間放牧しないくらいでは元の姿に戻ったりはしません。

土地はあっても牛が放せない、だから次の牧場を探す。
そういったサイクルに但馬の放牧場はなりつつあります。

「牛を自然に放して草を食べさせることは循環的な農業か?」と、聞かれれば、僕はyesと答えます。
しかし、今の野草地放牧のほとんどが、目の前の草を取りつくすだけのスタイルになっているって思うんです。

永続的なものにしていくためにはワラビのコントロールは必須。
使い倒すのではなく、1年ごとにその放牧場を休ませるような感覚で草を使っていかないと、せっかくの草資源も利用できなくなってしまう。

と言いながら僕もワラビには苦戦しています。。。(笑)

ワラビを刈り取った後で牧草と芝を一緒に播種するなど、野草だけに頼らない放牧場を作っていくのも大切なことだと思う。
これも凄く手間だけどね。。。

野芝は定着しにくいけれど、草密度と再生力が最高です。

ワラビが優勢になった土地も、放置し続ければいずれ違う草が生えてきます。
そして日本の気候では最終的には木が生えて森になります。
人がいくら手をかけようが荒らそうが、最後は森になる。

そういう意味では放牧も循環の中の一部だといえるかもしれない。
ただ、持続的な農法かと言われると違うってことなんだよね。

そんなことを考えながら今年も放牧をスタートさせていきたいと思っています。


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田中 一馬
1978年生まれ。兵庫県三田市出身。田中畜産代表。小さい頃から動物が大好きで北海道酪農学園大学へ入学。在学中に畜産の魅力に目覚め、大学院を休学して2年間畜産農家で住み込みの研修に入る。2002年に独立して田中畜産を設立。但馬牛の子牛生産をメインに、牛の蹄を切る削蹄師として全国の牛の蹄をサポートをしている。2008年に精肉部門を立ち上げ、自家産の但馬牛で放牧牛肉の生産と販売に挑戦中。